通商産業省工業技術院物質工学工業技術研究所
物質工学工業技術研究所標準物質認証書
認証標準物質
NIMC CRM5201-a
GaAs/AlAs超格子標準物質
GaAs/AlAs Superlattice Reference Material
SL001
本標準物質は、オージェ電子分光、X線光電子分光、二次イオン質量分析などにおけるイオンスパッタリングによる深さ方向分析の測定条件の調整のために用いることができる。

【特性値】
本標準物質は4層の層状構造を有し、各層の厚さは以下の通りである。

第1層(GaAs) 24.36±0.40 参考値(nm)
第2層(AlAs) 22.44±0.20 認証値(nm)
第3層(GaAs) 23.23±0.33 認証値(nm)
第4層(AlAs) 22.51±0.29 認証値(nm)

第1層目は、最表面に酸化層などの不純物層を含む。X線反射率による測定から、大気に10時間曝すことにより酸化層の厚さに0.3nm程度の増加が認められた。なお、不確かさはいずれも合成不確かさから信頼率95%における推定区間の幅と して求めた。

【その他参考値】
試料最表面の不純物層の厚さおよび界面の不完全性(急峻性に関する情報)について、X線反射率法によって評価された全データの平均値を参考値として記載する。界面の不完全性は、界面粗さに対してガウス分布を仮定したときの二乗平均粗さ(Root Mean Square Roughness)で定義される。誤差の値はいずれも標準偏差の2倍を示す。

表面不純物(酸化層) 1.16±0.19 参考値(nm)
界面の急峻性 0.33±0.09 参考値 (nm)

【特性値の決定方法】
本標準物質の特性値は、物質工学工業技術研究所において高分解能X線回折装置を用いてX線反射率法によって決定された。

【本標準物質の特性】
透過型電子顕微鏡による層構造の断面観察では格子像が得られ、第2-第4層の厚さはX線反射率による膜厚の特性値と0.5nmの範囲で一致した。原子間力顕微鏡観察では一方向に並んだステップが観察され、試料全面に渡りエピタキシー成長している。

【注意事項】
本標準物質は一辺が約10mm角の薄片でプラスチック容器に梱包され、配付前に窒素雰囲気下でプラスチ ック製袋に封じられている。開封はダストのない環境、可能であるならクリーンルーム内で行うことが推奨されるとともに、室温において窒素気流下あるいは乾燥状態で保存する必要がある。なお、本標準物質は1片毎に認証値が付与される。

【製造方法】
本標準物質は、有機金属気相成長法により、2インチGaAs基板上に200nmの厚さのGaAsバッファー層を堆積した 後、4層の積層を行い、これを切断して製造した。

【試料の均質性】
本標準物質のサイズが10mm角であるのに対して、 X線反射率測定では試料表面上にX線が入射され約3-20mm2のスポット部分の平均として測定値が得られる。また、AFMによる観察で試料表面全体にステップ像が観察さ れることから膜の成長は均質であり、本標準物質の使用目的のためには試料の均質性は問題にならない。

【試料の安定性】
本標準物質の保証期間は製造後5年とし、その間1年ごとに手元試料について再測定を行 い、もし認証値が変化した場合はユーザーにその旨通知する。

【製造及び値付け参加機関】
本標準物質は、NTTエレクトロニクス(株)において製造された。認証値および参考値の決定は物 質工学工業技術研究所で行われた。

【付記】
ISO 14606:2000 (Surface chemical analysis -- Sputter depth profiling -- Optimization using layered systems as reference materials)にお いて本標準物質の使用が推奨されている。
研究開発は、(財)大阪科学技術セン ター付属ニューマテリアルセンターに委託され、非鉄金属系新素材の知的基盤整備委員会表面化学分析標準物質分科会(委員長、吉原一紘)において行われた。研究参加機関は、金属材料技術研究所、物質工学工業技術研究所、(株)東レリサーチセンタ ー、川崎テクノリサーチ(株)、NTTエレクトロニクス(株)、NTTアドバンストテクノロジ(株)、(株)ジャパンエナジー、住友金属テクノロジー(株)である。

平成12年11月22日
物質工学工業技術研究所
所長 久保田 正明


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